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2012年2月19日日曜日

できたてホヤホヤ かもがわブックレット「子どもと保育が消えてゆく」

川口創弁護士さんのブログからです。


「子どもと保育が消えてゆく」が出来ました。

「子どもと保育が消えてゆく」(かもがわブックレット)が出来ました。

全国の書店に並ぶのは来週末になるようですが、僕の手元には、今日届きました。

保育園に子どもを預ける親の目線から書きはじめ、新システムについては、障がい者自立支援法などの現場を知る立場も交えながら、書いています。

今日一日だけで、かなりの方に買っていただき、好評を得ています。

お願いがあります。地元の図書館に行って、「かもがわ出版からでた、子どもと保育が消えてゆく、という本を読みたい」とお願いいただき、各地の図書館に一冊、おいて欲しいと思います。

少しでも多くの方の目にとまることを期待しています。

保育の解体を食い止め、保育をよくすることに、人間らしい社会を作ることに、ほんの少しでも僕の一冊が役に立てばいいと思っています。
 
子ども子育て新システムで、多くの保育園がつぶれる
■補助金なしでは手厚い保育は不可能

 子ども子育て新システムになれば、自治体から保育園(こども園)への補助金が一切なくなります。そして、「こども園」に経済原理が持ち込まれる結果、こども園ではどうしても「利益拡大」と「コスト削減」が第一となります。

 親の保育料と、わずかな「こども園給付」で、手厚い保育ができるはずはありません。保育園の「費用」の多くは人件費ですから、人件費の抑制が進み、非正規雇用が拡大されることになるでしょう。

 経験豊富な保育士が、現場を去り、保育のスキルが承継されなくなります。
 保育士は一人でなるべく多くの子どもを見なければならなくなり、保育士は余裕がなくなります。子ども一人一人の個性を丸ごと受け止めながら、それぞれの育ちを大事にした保育の実践はできなくなっていくでしょう。
 子ども達は、伸びやかに、安心して日々生活し、育っていくということが困難となります。

 保育士の入れ替わりも激しくなり、子どもは信頼できる保育士を作ることができなくなって不安定になります。子どももストレスが増え、心身の健全な発達に悪影響が生じかねません。けんかや事故も増えかねません。
 子どもの育ちは、年単位などの長いスパンで見ていくことが求められますが、こういった長い目での保育もできなくなるでしょう。

 保育園の経営は不安定となり、特に小規模で、手厚い保育をしてきた保育園は厳しい経営を強いられるでしょう。
 保育の質を確保しようとする認可保育園はつぶれていき、残るのは、たくさんの子どもを預かる「マンモス園」、高い保育料が必要な「ブランド園」、保育者として非正規職員ばかりを雇っている「低コスト園」、そして、マンションの一室で行う「保育ママチェーン」ということになりかねません。

■介護保険の世界では、「廃業」が加速している

 子ども子育て新システムが参考にしている介護保険は2000年にスタートしました。
 
 しかし、サービスを利用する人が増え続けると財政が不足して制度が破綻する、などとして、わずか4年後の2004年には「介護給付適正化推進運動」が始まり、大幅な給付抑制、利用制限がされました。2006年には、介護サービス会社最大手のコムスン(グッドウィルグループ)による介護給付の不正請求が発覚し、給付抑制、利用制限がさらに強まります。

 その結果多くの事業者が「採算の悪化とともに人材不足で事業継続が出来ない」として、介護事業から撤退していきました。東京都の「介護事業者指定数の変化」によれば、2006年11月と2009年11月との事業者の数字を比較した場合、居宅介護支援事業所は472減、訪問介護事業者は497の減、という結果が出ています(参入している業者もいる中でのプラスマイナスで、それだけの減、ということは、もっとつぶれているということです)。

 「新システム」が導入された後、保育園(こども園)は増えるばかりか減る一方、ということになるでしょう。

■保育を「福祉」から「ビジネス」に
 新システムでは、保育所を設置する時点で、国が定めた基準を満たしているかを審査する「認可制度」を取り、保育所の設置に高いハードルを課してきました。
 これに対して、一部企業家は、今の公的保育制度を「参入障壁」と批判し、「規制緩和」を強く求め、「新システム」の実現を唱えてきました。新システムは、こうした声に応じ、認可制度を指定制度に変えます。保育を「福祉」から「ビジネス」に変え、多くの株式会社などの企業を積極的に「保育業界」に呼び込もうとしています。

  現在、公立、認可保育園に212万人を超える子ども達が通っていますが、その子ども達が「公的な傘」から「市場」に放り出されれば、「200万人市場」が生まれることになります。一部企業家は、この「市場」で利益を上げていくことを狙っています。

 しかし、子どもの命を守るための制度を「参入障壁」と捉えること自体誤っています。今の保育制度の「規制緩和」により、保育園(こども園)の「質」が落ち、200万人の子どもの安全が脅かされかねません。

 もともと保育は「儲かる業界」ではあり得ません。それを「儲ける業界」にするためには、いかに人件費などを減らし、利益に回していくかが重要な関心事になってしまいます。

 保育経費の中心は人件費ですから、「コスト削減」のためには人件費を削減し、非正規職員ばかりの職場にせざるを得ないでしょう。それでは保育の質が低下していくことは目に見えています。

 実際に「ベビーホテル」などの認可外保育園では、コストをカットして利益を最大化していくために、人件費を徹底的にカットする一方で、詰め込み保育をしてきました。その結果、多くの事故を招いてきたのです。

 保育を産業にし、金儲けの道具とすることで、子どもたちの尊い命が犠牲になりかねません。


 

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